「つながる」から生まれる未来
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インタビュー

桐山登士樹
インタビュー Vol.2
桐山登士樹
1952年長野県生まれ
デザインマーケティング、ブランドプロデュース
建築・デザイン展のキュレーションおよび運営を行う株式会社TRUNK代表
デザインをキーワードに、民間企業から公共機関まで、様々な組織のデザイン戦略を支援する桐山登士樹さんに、ご自身のバックグラウンドと地方創生の可能性についてうかがいました。
Q: 桐山さんにとっての“ふるさと”とは?
A: 生まれは長野県の松本なのですが、22年も通っている富山が最近、自分の故郷以上に「ふるさと」になっているような気がします。生まれ育った場所よりも長い時間そこに関わり、それこそ肉親よりも、そこにいる人たちと会うことの方が多くなっている。地域との繋がりという意味では、富山は完璧に僕の第二の“ふるさと”になっていると思います。それから、イタリアにはもう二百回以上通っています。ミラノのリナーテ空港を降りた瞬間から、この街の空気は自分にとって快適な場だということを体が知っている。そこにまったく違和感はないし、僕にとっての“ふるさと”とは、場所はどこであろうと、そこの空気感、肌で感じる感覚が自分にとって快適か、そこが自分の居場所と思えるかどうかで決まるような気がします。
Q: 編集者からプロデューサー、デザインディレクターへと変わったきっかけとは何だったのでしょうか?
A: 大きな意味では、結局自分の可能性、自分の適性とは何かということを、自分なりに追い求めた結果だと思います。たとえば、編集者として活動しながら「こんなに素晴らしい人が身近にいるのに、これしか売れないのか。本当にメディアは想いを伝えるようなことをしているのか」、いわばメディア側からちょっと引いて見るようなところがありました。それであるとき、今の延長線上に何かが起こるのではなくて、やはりどこかを変えていかないといけない、それをいかに早く自分なりに明確にしていくか、行動に移していくかということが大事なのではないかと考えるようになったのがきっかけですね。
Q: 桐山さんがこれまで体験された地方の魅力、それによる地方の活性化について、今一番気になることは何でしょうか?
A: 今一番面白いのはホテルだと思っています。地方にはチェーン展開しているホテルが軒を連ねていますが、そういうビジネスホテルからは何も生まれてこない。一日の終わりの一番大事な寝る時間を、逆に疲れを増すようなああいった部屋で休むのはとても耐えられない。そういう意味で地方には今、宿泊施設として安らげる場所がない。決してゴージャスなホテルをイメージしているのではなく、聴きたいときに自分の好きな音楽が聴けるとか、自然を感じたいときは窓が開けられるとか、その土地の空気が感じられるとかであって、それは標準化とまったく逆です。標準化を全否定するものではありませんが、旅先でわざわざどこにでもある標準化されたホテルや部屋でいいのかと、いつも考えています。
Q: 若者に地方の魅力を気付かせるうえで大切なこととは何でしょう。
A: いろいろな場に立ち会う、体験する、そこで話を聞いて仲間に入る、一緒に語り合うといった、きわめてアナログなことです。僕もそのあたりをねらって、富山でデザイン会議などを仕掛けています。「この会議に参加しないと遅れちゃうぞ」みたいな雰囲気を作って、東京から富山へ行きたいと思わせるような刺激を与える。東京だと、どうしても限られた時間のなかで限られた話しかできない。ところが、今日は富山で一泊となれば話もちゃんとできるし、ロビー活動的に合間合間に話もできるし、お酒を飲みながらゆっくり話すことができる。つまり、東京とは違った時間の使い方ができるのが地方なのだと思います。今、若者を問わず求められているのは、モノの形から入るのではなく、コトから入ること。僕の立場からいうと、デザイン的にどうそのシチュエーションを作っていけるか、そのプロデュース力が問われていると思っています。
Q: 最後に桐山さんの旅のスタイルをお聞きしたい。
A: 僕にとって、仕事の出張旅行もプライベートの旅も同じです。移動することに対してポジティブ、というより、移動が大好きな人間なので、たとえば、先日一泊でジャカルタに行ってきたのですが、夜中の二時にホテルに着いて翌朝八時から仕事だったので、ホテル滞在六時間です。でも、そこで味わう東京とは違うインドネシアの風景、そこで働き、生活している人々の動き、気候風土などを見て、感じるだけでも楽しめる。現地での行動は、基本的に交通網の発達した都市に行くことが多いので、たとえばミラノならトラム(路面電車)か、そうでなければ徒歩。歩くことによっていろいろなものが見えてくる。どういうわけか方向感覚が良いので、ここ何年かは地図を見ながら歩くということがありません。それから時間があれば、ゆっくり写真を撮りたいですね。